「あとで整理すればいい」が一番危ない― 医療法人申請で困る個人開業医の共通点 ―

「忙しいから、書類はあとでまとめよう」
「顧問税理士がいれば、何とかなるだろう」

こうした考え方が、医療法人化のタイミングで一気にリスクに変わることをご存じでしょうか。
実際に医療法人申請の現場では、“あとで整理型”の個人開業医ほど、申請直前でつまずくケースが後を絶ちません。

本記事では、医療法人申請で困りやすい個人開業医の共通点と、今からできる現実的な対策を整理します。

1. なぜ「あとで整理」が通用しなくなるのか

個人開業のフェーズでは、多少のどんぶり勘定や書類の未整理があっても、
日々の診療と確定申告さえ回っていれば、表面上は問題になりません。

しかし、医療法人申請は“過去の経営履歴”を問われる手続きです。

医療法人申請で見られる主なポイント

  • 過去数年分の決算書・収支状況
  • 院長個人と事業のお金の流れ
  • 借入金・リース・未払金の内容
  • 役員報酬設計の妥当性
  • 事業の継続性・安定性

つまり、
「今後きれいにすればいい」ではなく、「これまでどうやってきたか」が問われます。


2. 医療法人申請で困る個人開業医の共通点

共通点① お金の流れを“感覚”で把握している

  • 生活費と事業用資金が混在
  • 法人口座を作る前提での整理をしていない
  • 「だいたいこれくらい儲かっている」という認識

この状態で医療法人申請に進むと、
数字を一から掘り起こす作業が発生し、時間もコストも一気に跳ね上がります。


共通点② 税理士・社労士に“丸投げ”している

もちろん専門家は不可欠です。
しかし、

  • 「先生は何も把握していないですね…」
  • 「この取引、説明がつきません」

と言われてしまうケースも少なくありません。

申請主体はあくまで院長本人。
経営の説明責任からは逃げられません。


共通点③ 法人化を“節税イベント”だと思っている

「法人化すれば税金が下がる」
これは半分正解で、半分間違いです。

実際には、

  • 役員報酬設計
  • 医療法人と個人の資産切り分け
  • 将来の分院展開・承継

まで見据えないと、
法人化したことで逆に身動きが取れなくなることもあります。


共通点④ タイミングを直感で決めている

  • 「そろそろ法人化した方がいい気がする」
  • 「知り合いの先生が法人化したから」

このような理由で進めると、

  • 決算期との不整合
  • 借入条件の悪化
  • 想定外の税負担

といった後戻りできない問題が起こりがちです。


3. 「整理してから法人化」は、ほぼ間に合わない

よくある相談がこちらです。

「来年、法人化したいので、今年中に整理します」

結論から言うと、遅いケースが大半です。

なぜなら、

  • 過去2〜3年分の数字が必要
  • 修正が必要な場合、1期では足りない
  • 金融機関・行政との調整に時間がかかる

「整理 → 法人化」ではなく、
「法人化を前提にした整理」を数年前から始める必要があります。


4. 今からできる、現実的な対策

✔ 対策① お金の流れを3つに分けて考える

  • 院長個人のお金
  • クリニック事業のお金
  • 将来の法人・資産形成のお金

この切り分けができるだけで、
法人化後の設計自由度は大きく変わります。


✔ 対策② 数字を「説明できる状態」にする

  • なぜこの借入があるのか
  • なぜこの支出が必要なのか
  • 今後どう改善するのか

完璧でなくていいので、説明できることが重要です。


✔ 対策③ 法人化を“ゴール”にしない

医療法人化は、

  • 経営のスタート地点
  • 将来戦略の土台

です。

節税だけでなく、

  • 働き方
  • 引退後
  • 承継・売却

まで見据えて設計しましょう。


5. まとめ|「あとで整理」は一番高くつく

医療法人申請で困る先生に共通するのは、
能力や努力ではなく、準備のタイミングです。

  • 忙しいのは全員同じ
  • だからこそ、先送りが一番のリスク

「法人化はまだ先」と思っている今こそが、
一番コストをかけずに整えられるタイミングです。

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HK

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