「こんなはずじゃなかった…」開業後の現実とは?クリニック経営でよくある5つの問題点と解決法【事例あり】

クリニック経営でよくある5つの問題と解決法

クリニックの開業は、医師にとって理想の医療を実現する大きな一歩です。しかし、いざスタートしてみると、診療とは異なる「経営の現実」が待ち受けています。
現場を支える事務長や経営支援を行うコンサルタントの立場から見ても、開業直後に「こんなはずじゃなかった」と感じる院長は少なくありません。

本記事では、現場でよく見られる開業後の課題を5つの視点から整理し、それぞれに対する実践的な解決策をご紹介します。


1. 思ったよりも患者が来ない…【集患の壁】

▷ 問題点と現場事例:

開業前に「立地がよければ自然と患者は集まる」と考えていた院長が、半年経っても1日10人前後の患者数に悩むケースは多いです。
特に、医療モール内や駅近に出店しても、競合クリニックとの差別化ができておらず、Web上の存在感が薄いと、地域住民に認知されません。

例:内科クリニックA(郊外の新興住宅地)
「Web予約もなく、ホームページが1枚のみ。口コミもゼロ」で、1年で赤字転落。開業2年目にようやくSEOとLINE予約導入でV字回復。

▷ 解決策:

・ターゲット設定の見直し(誰に来てほしいのかを明確に)

・Web予約・Googleビジネスプロフィール・口コミ対策の徹底

・医療広告ガイドラインに配慮したSEO施策

・地域密着型イベントやチラシ配布での認知拡大

・SEO対策を施したホームページ運用

・月1回の地域健康セミナーや検診キャンペーンなども有効

2. スタッフとのトラブル・人材定着の難しさ

▷ 問題点と現場事例:

「面接では感じがよかったのに、実際はスタッフ間の人間関係で悩まされる」「受付と看護師が対立して院内がギスギス」など、職場の人間関係トラブルは、開業初期に意外と多い問題です。院長が「優しすぎる」「関与しなさすぎる」ことが拍車をかけます。

例:整形外科B
受付と看護師の役割分担が曖昧でトラブルが頻発。退職者が続出し、地域で「スタッフがすぐ辞めるクリニック」と悪評が立つ。

▷ 解決策:

  • 開業前から役割・評価基準・マニュアルを整備
  • コミュニケーションの場(朝礼・ミーティング)を仕組みに
  • 中途採用時はカルチャーフィットを重視し、即戦力より「協調性」を評価
  • 院長が“経営者”として定期的にマネジメントに関わる意識を持つ

3. 会計・税務・経理に手が回らない

▷ 問題点と現場事例:

「経理は妻がやっている」「確定申告は年1回税理士に渡すだけ」…
このような体制では、資金繰りの把握もできず、いつの間にか赤字・資金ショート寸前という事態も。

例:小児科C
経費と収入の記録を手書きで管理、月末にまとめて入力。補助金申請や銀行対応も遅れ、事業拡大チャンスを逃す。

▷ 解決策:

  • 開業前から医療系に強い税理士・社労士を選定
  • freeeやマネーフォワード等クラウド会計の導入
  • 月次試算表のチェック体制を事務長が担う形に
  • 診療報酬入金遅延や返戻への迅速対応体制の構築

4. 医師業務+経営業務の両立が難しい

▷ 問題点と現場事例:

診療・問診・カルテ記載に加え、電話対応や備品手配、求人対応、クレーム処理まで院長がすべて兼任して疲弊…
結果、診療ミスや対応の遅れにつながり、患者満足度も低下するという悪循環に。

例:内科D
予約管理は紙台帳、クレジット対応もなし。患者数は増えても運営がパンクし、最終的に医師が体調を崩して診療縮小。

▷ 解決策:

  • 事務長・受付主任の権限移譲・業務分担の徹底
  • 外部委託(人事・広報・備品発注・採用代行)を適切に使う
  • システム導入(電子カルテ、予約、問診の自動化)で事務負担を軽減
  • 院長の「診療に専念できる時間帯」を確保するための動線設計

5. 経営方針や目標の見失い

▷ 問題点と現場事例:

日々の診療・雑務に追われ、気づけば「何のためにこのクリニックをやっているのか?」が見えなくなるケース。
スタッフとの価値観もズレ始め、組織としての一体感が失われる事態にもつながります。

例:皮膚科E
院長が毎回異なる方針を打ち出し、スタッフが混乱。誰も「何を優先すべきかわからない」とモチベーションが低下。

▷ 解決策:

  • 年に1回、ビジョンと目標をスタッフと共有する経営会議を実施
  • 事務長とともに、短期・中期計画を数字と行動レベルで可視化
  • 患者満足度アンケートの定期実施で「外からの視点」も反映
  • コンサル導入による“第三者からの経営視点”も有効


まとめ|“理想”と“現実”を埋めるには、経営視点の導入がカギ

クリニック経営の失敗の多くは、「診療スキル」ではなく「経営の準備不足」に起因します。
現場に寄り添う事務長や外部のコンサルタントと連携しながら、早期に“経営の見える化”と“業務の仕組み化”を行うことが、持続可能なクリニックづくりの鍵です。

「診療に集中できる環境をつくる」
そのために、経営の仕組みを整えることが、院長にとって最大の“守り”になります。

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HK

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