クリニックでもよく使うあのサービスも狙われた。実は個人診療所も攻撃されているサイバー攻撃のリスクとは。

「サイバー攻撃は大病院や大企業の話」
そう思われがちですが、近年は個人診療所・小規模クリニックこそ狙われやすい状況になっています。

実際に、予約管理・電子カルテ・クラウドサービス・メール・Webサイトなど、
多くのクリニックで“当たり前に使われているサービス”が攻撃対象となり、
診療停止・個人情報漏えい・金銭被害に発展するケースも増えています。
金銭被害は、1億円程度~十数億が多いです。

どんなリスクがあるのか

① ランサムウェアによる診療停止リスク

現在、医療機関で最も深刻なのがランサムウェア攻撃です。

  • 電子カルテが暗号化され開けない
  • 予約・会計システムが停止
  • 「復旧したければ金銭を支払え」と要求される

特に個人診療所では、
1日止まる=売上がゼロになるという致命的な影響があります。


② 患者情報漏えいによる損害賠償リスク

クリニックが扱う情報は、

  • 氏名・住所・電話番号
  • 保険情報
  • 診療内容・検査結果

といった極めて機微性の高い個人情報です。

漏えいが起きると、

  • 患者への謝罪・説明対応
  • 行政指導
  • 損害賠償請求
  • 信用低下・口コミ悪化

など、経営に長期ダメージを与えます。


③ 金銭被害・詐欺リスク

ランサムウェア以外にも、

  • 院長名義を装った振込指示メール
  • 取引先を装った請求書詐欺
  • クラウドサービスの乗っ取り

といった直接的な金銭被害も増えています。


どんな対策ができるのか(今すぐできる対策)

① ランサムウェア対策の基本

高度なシステム導入よりも、まずは基本対策が重要です。

  • OS・ソフトを常に最新状態にする
  • 不審なメール添付・URLを開かないルール徹底
  • 管理者権限を必要最小限にする
  • バックアップを「別の場所」に保存

特にバックアップは
「ランサムウェア対策の最後の砦」になります。


② ID・パスワード管理の徹底

侵入経路で最も多いのがアカウント情報の漏えいです。

  • パスワードの使い回しをしない
  • 二要素認証(2FA)を有効化
  • 退職者・異動者アカウントを即削除

これだけでも被害リスクは大きく下がります。


③ スタッフ教育(人的リスク対策)

多くの事故は、

「スタッフがメールを開いた」

というヒューマンエラーがきっかけです。

  • 年1回の注意喚起
  • 実際の事例共有
  • 「迷ったら開かない」文化づくり

これだけでも、攻撃成功率は大幅に低下します。


どんな対策が必要か(中長期視点)

① 損害補償をどう考えるか

どれだけ対策をしても、
サイバー被害を100%防ぐことは不可能です。

そのため重要なのが、

  • 被害が出たときに「誰が・どこまで」補償するか
  • 院長個人・法人がどこまで責任を負うか

事前に整理しておくことです。


② セキュリティ保険の加入という選択

近年、多くの医療機関が検討しているのが
サイバーセキュリティ保険(サイバー保険)です。

補償内容の例:

  • ランサムウェア被害時の復旧費用
  • 専門業者(フォレンジック調査)の費用
  • 患者対応・損害賠償費用
  • 休業による損失補填

「対策」+「万が一の補償」をセットで考える
これが現実的なリスク管理です。


③ IT・セキュリティ管理の役割分担

多くのクリニックでは、

  • 院長が何となく把握
  • ベンダー任せで全体が見えない

という状態になっています。

必要なのは、

  • 院内のIT管理責任者(兼務でOK)を決める
  • ベンダー・保険・院内ルールを整理する

「誰が判断するのか」を決めるだけで、事故時の混乱は激減します。


どんなクリニックが狙われるのか

狙われやすいクリニックの特徴

  • 個人診療所・小規模クリニック
  • IT専任者がいない
  • 古いPC・OSを使用
  • パスワード管理が曖昧
  • セキュリティ保険に未加入

攻撃者から見ると、

「守りが弱く、支払い能力はある」

非常に効率の良いターゲットです。


まとめ|サイバー対策は「経営リスク対策」

サイバー攻撃対策は、
ITの話ではなく「経営リスク管理」です。

  • ランサムウェア対策
  • 情報漏えいへの備え
  • 損害補償・セキュリティ保険

この3点をセットで考えることで、
クリニック経営の安定性は大きく高まります。

「診療に集中できる環境を守る」
それもまた、院長の重要な経営判断のひとつです。

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HK

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