クリニックの経営管理~医療と経営の分離のススメ①

はじめに

 クリニックの運営は、医療の提供だけでなく、経営管理の視点からも適切な意思決定が求められます。特に、医療の質を維持しながら経営を安定させるためには、医療の実務と経営管理を分離することが重要です。クリニックにおける「医療と経営の分離」にいては、規模やげ様々なアプローチ方法があります。

医療と経営の役割の違い

まず、医療と経営の役割の違いを理解することが大切です。医師や医療従事者は、患者に対して適切な治療やケアを提供することが主な業務です。一方で、クリニックの経営管理者は、収益の確保やコスト管理、労務管理、法令遵守など、医療提供以外の業務を統括します。この役割の違いを明確に分離しないと、医師が本来の業務に集中できなくなり、結果として医療の質やクリニック全体のパフォーマンスが低下するリスクがあります。

経営管理と医療の分離の意義

クリニックにおける医療と経営の分離は、次のような点で重要です。

  1. 医療の質の向上
    医師が医療提供に専念できる環境を整えることで、診療や患者ケアの質が向上します。経営の責任を持つ担当者が別にいることで、医療従事者は経営的な負担を感じることなく患者に集中することができます。
  2. 経営の効率化
    経営と医療の役割を分けることで、経営管理に特化した専門家がリソース管理、マーケティング、財務計画などの業務を担うことができ、結果として経営の効率化が進みます。
  3. 法令遵守の確保
    医療法や労働法、税務に関する法規制は複雑であり、これらを専門的に管理する必要があります。経営を専門に担当する人材がこれを行うことで、法令違反のリスクを減らし、クリニックの安定運営に寄与します。

経営管理の具体的手法

では、クリニックにおいて医療と経営をどのように分離し、管理していくべきかについて、具体的な方法を見ていきます。

  1. 経営管理者の任命
    経営管理の専門家、あるいは医療経営に精通したコンサルタントを採用することで、日々の財務管理や人事管理を効率的に行うことができます。
    事務長が担当できる場合は、内部で構築することも可能です。
    大手医療法人などは、経営企画室、経営管理部門などで担っています。
  2. 電子カルテシステムの導入
    経営と医療のデータを適切に管理するためには、電子カルテ(EMR)や病院情報システム(HIS)の活用が不可欠です。これらのシステムを導入することで、経営情報と医療情報の分離・統合管理がスムーズに行えます。
  3. 定期的な経営指標のモニタリング
    経営の健全性を保つために、クリニックの収益、コスト、患者数、スタッフの労働時間など、経営指標を定期的にモニタリングし、分析を行うことが重要です。これにより、問題が発生する前に対策を講じることができます。
  4. リスクマネジメント体制の整備
    経営と医療の分離を進める際に、リスクマネジメントも重要な課題です。経営に関連するリスク(例えば財務リスクや法的リスク)に対しては、専門家が事前にリスクヘッジ策を講じておく必要があります。

まとめ

 クリニックにおける経営管理と医療の分離は、医療の質と経営の効率化を両立させるための重要な戦略です。医師が医療に専念し、経営専門家がクリニックの安定運営を支える体制を整えることで、クリニック全体のパフォーマンスが向上します。特に、適切な経営管理者の配置やITツールの導入、経営指標のモニタリングを通じて、医療と経営のバランスを最適化していくことが求められます。

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HK

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