医療法人の出資持分とは?持分ありと持分なしの違いと見分け方

1. はじめに

医療法人の運営において、出資持分の有無は重要なポイントです。特に、旧法に基づく持分ありの医療法人と、新法に基づく持分なしの医療法人では、その運営や継承において大きな違いがあります。本記事では、医療法人の出資持分について解説し、持分ありと持分なしの見分け方についても説明します。

2. 医療法人における出資持分とは?

出資持分とは、医療法人の設立時に出資した資金に対する持分のことを指します。この持分は、出資者に対して法人の財産に対する権利を与え、解散時にはその持分に応じて財産の分配を受ける権利があります。

  • 持分あり: 旧法に基づく医療法人では、出資者に持分があり、法人の財産に対する権利が明確に認められています。持分を有する出資者は、その法人が解散した際に、持分に応じた財産分配を受ける権利があります。
  • 持分なし: 新法に基づく医療法人では、出資者に持分がありません。これは、公益性を強調するための変更であり、持分なし医療法人は解散時に財産の分配が行われず、残余財産は公益法人に帰属することになります。

3. 持分あり医療法人(旧法)

旧法に基づく持分あり医療法人は、出資者に法人の財産に対する持分を認めるものでした。この持分は、相続や売却が可能であり、特に次のような特徴があります。

  • 相続の問題: 持分あり医療法人では、出資者が亡くなった場合、その持分は相続の対象となります。このため、相続税の問題が発生する可能性があり、特に大きな持分を有する場合には、多額の相続税が課されることがあります。
  • 持分の売却: 持分は売却可能であり、出資者が法人から離れる際には、その持分を他者に売却することができます。ただし、この売却には理事会の承認が必要であり、買い手が見つからない場合もあります。

4. 持分なし医療法人(新法)

新法に基づく持分なし医療法人は、出資者に対する持分が認められておらず、法人の公益性が重視されています。持分なし医療法人の特徴は次の通りです。

  • 公益性の強調: 持分なし医療法人は、解散時に財産が出資者に分配されることはなく、公益法人に引き継がれるため、法人の財産が公共の利益のために使われます。
  • 相続税の回避: 持分が存在しないため、相続時に相続税が発生することはありません。これにより、次世代に法人をスムーズに継承することが可能です。
  • 運営の透明性: 持分なし医療法人は、出資者に対する利益分配が行われないため、法人運営の透明性が高く、社会的な信頼が得やすいです。

5. 持分あり、持分なしの見分け方

医療法人が持分ありか持分なしかを見分ける方法は、いくつかのポイントに基づいて判断できます。

  • 定款の確認: 定款に出資持分に関する記載があるかどうかを確認します。持分ありの場合、出資持分に関する条項が明記されています。
  • 設立年の確認: 一般に、持分あり医療法人は旧法(平成19年以前)に設立された法人で、新法に基づく持分なし医療法人は平成19年以降に設立されています。
  • 登記情報の確認: 法人の登記情報を確認することで、持分に関する情報が得られる場合があります。特に、法人の種類や設立目的に関する記載を確認します。
出資持分の有無の見分け方

6. まとめ

医療法人の出資持分は、法人の運営や継承に大きな影響を与える重要な要素です。持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いを理解し、それぞれのメリットとデメリットを把握することが、適切な運営と将来的なトラブルの回避につながります。クリニックや医療法人の設立・運営を考える際には、この点をしっかりと考慮しましょう。

(参考)医療法人の基礎知識:厚生労働省

(参考)医療法人の出資持分の変更があった場合:国税庁

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HK

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