自社ビル・駐車場をMS法人で保有すべき理由

クリニック経営において、自社ビルや駐車場用地を「医療法人」ではなく「MS法人(メディカルサービス法人)」で保有することは、リスク管理と資産形成の観点から非常に有効な手段です。
本記事では、その理由とメリットについて解説します。


1. 医療法人の財産制限からの自由

医療法人には、「余剰財産の帰属制限」という特徴があります。
つまり、医療法人が蓄積した財産は、解散時に自由に分配できず、原則として国や都道府県などに帰属することになります。

これに対して、MS法人は一般の株式会社と同じ扱いであり、資産の所有や売却に制限がありません。
将来的に資産の売却や活用を柔軟に行いたい場合、自社ビルや駐車場はMS法人で持つ方が合理的です。


2. 医療事業リスクとの切り分け

医療法人の運営には、医療事故リスクや経営リスクが常に伴います。
もし医療法人が万一の訴訟や債務問題に直面した場合、その保有資産も影響を受ける可能性があります。

一方、MS法人で不動産を保有していれば、医療事業とは別法人となるため、リスクを切り分けて守ることができます。
経営の安定性を高めるうえでも、不動産はMS法人側に持たせることが望ましいのです。


3. 賃貸料収入によるキャッシュフローの強化

MS法人が自社ビル・駐車場を所有し、医療法人に賃貸する形を取れば、MS法人に安定した賃料収入が発生します。
これにより、以下のメリットが得られます。

  • MS法人側で別収益を確保できる
  • 資金繰りの選択肢が広がる
  • 法人間取引による税務コントロールも可能(※適正な賃料設定が必要)

特に医療法人の利益調整や、経営者一族による資産管理を意識する場合、この仕組みは非常に有効です。


4. 事業承継・相続対策にも有利

将来的に、クリニックを事業承継する際、医療法人が不動産を所有していると、承継手続きが煩雑になったり、不要な贈与税・相続税問題を引き起こすリスクがあります。

一方、MS法人に資産を集約しておけば、

  • 株式の承継だけでスムーズに資産移転が可能
  • 医療法人側の承継とは切り離して検討できる
  • 資産単体で売却・運用する選択肢も持てる

といった柔軟な対応が可能になります。


まとめ

✅ 医療法人の財産制限を回避できる
✅ 医療事業リスクと資産リスクを切り分けられる
✅ MS法人に安定的なキャッシュフローを作れる
✅ 将来の事業承継・相続にも柔軟に対応できる

自社ビル・駐車場をMS法人で保有することは、
単なる「節税」ではなく、クリニック経営のリスク管理・資産防衛・未来設計に直結する重要な戦略です。
今後の安定経営を見据え、ぜひ検討を進めてみてください。

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HK

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