診療圏調査のやり方と注意すること～開業地の選定前にしておくこと～
HK1. はじめに
クリニックを開業する際、成功の鍵となるのは適切な開業地の選定です。そのために、診療圏調査は欠かせないステップです。診療圏調査を通じて、地域の医療ニーズを把握し、適切な場所にクリニックを開業することで、安定した患者数を確保できます。本記事では、開業地の選定におけるポイントと診療圏調査の具体的な方法について解説します。
2. クリニック開業地の選定
クリニック開業地を選定する際には、以下のような要素を考慮することが重要です。
- 人口構成: 地域の人口動態を確認し、高齢者が多い地域や若い家族が多い地域など、クリニックのターゲットとなる層がどれだけ存在するかを把握します。特定の診療科目が求められている地域を選ぶことが成功の鍵です。
- 交通アクセス: 患者が通いやすい場所にクリニックを開設することが重要です。公共交通機関の利用が便利な場所や、駐車場が確保できる場所は、特に都市部では有利です。
- 競合状況: 既存の医療機関の数や、その診療内容を調査します。同じ診療科がすでに飽和している地域では、新たなクリニックの開業が難しい可能性があります。競合が少なく、ニーズがある場所を選ぶことが理想的です。
3. 診療圏調査とは？
診療圏調査とは、クリニックの開業予定地における医療需要を分析するための調査です。この調査により、地域の患者数や医療ニーズを予測し、開業後の経営計画に役立てることができます。
- 人口データの分析: 地域の総人口や年齢層、世帯構成などのデータを収集し、ターゲットとなる患者層を特定します。また、将来的な人口動向も予測し、長期的な視点での開業地選定を行います。
- 疾病構造の把握: 地域ごとの疾病構造（どの病気が多いか）を調査し、それに基づいた診療科目の設定や医療サービスの提供が可能です。例えば、糖尿病患者が多い地域であれば、内科クリニックの開業が効果的です。
- 競合分析: 既存の医療機関の診療科目、診療時間、口コミなどを分析し、自クリニックがどのように差別化できるかを検討します。競合との適切な距離や差別化ポイントを見つけることが重要です。
4. 診療圏調査の具体的な方法
診療圏調査を行う際の具体的な方法を以下に示します。
１．自院で情報収集、分析を行う方法
ポイント：処方箋情報、バックベッド等とのコネクションが必要
- データ収集: 地方自治体や国の統計データ、医療機関のデータベースを活用し、人口構成や疾病動向などのデータを収集します。また、インターネット調査やアンケートを活用して、地域住民の医療ニーズを直接把握することも有効です。
- GIS（地理情報システム）の活用: 地図上にデータを可視化し、診療圏内の人口分布や既存医療機関の位置関係を把握します。これにより、視覚的に診療圏の分析が行えるため、開業地の選定がより正確になります。
- フィールドワーク: 実際に開業予定地を訪れ、周辺環境や交通アクセス、近隣の医療機関の状況を確認します。現地での視察により、紙上のデータでは得られない情報を収集することができます。
- 処方箋調査・動態調査：地域の処方箋薬局、病院等との連携で入手できるデータ
２．診療圏調査サービスを利用する方法
上記以外にも製薬会社、医療機器メーカー、情報会社などが診療圏調査サービスを行っています。無料で開始できるものも多く、より詳細なサポートを受ける場合には費用が上がる。
簡単なVBA.BIツールなどを活用することで、無料で調査できる内容については、自院での分析と同程度となる。
３．上記を組み合わせて、調査、分析を行う方法
診療圏調査のサービスでは、診療圏調査以外のサポートが必須となるものもあり、費用が高額になる場合があります。また、情報の整合性をはかるために複数のサービスを使って統計・調査・分析をすることが大切です。
そこで、自前でも調査をしながら複数のサービスの情報を統合することで、開業に向けて納得感がある事前調査となります。
5. まとめ
クリニックの開業に向けた診療圏調査は、成功するための不可欠なステップです。地域の人口構成、疾病動向、競合状況を詳細に調査し、それに基づいて開業地を選定することで、安定した経営基盤を築くことができます。診療圏調査の結果を元に、適切な診療科目やサービス内容を設定し、地域住民のニーズに応えるクリニックを目指しましょう。
