医療法人の出資持分ありなしの見分け方

医療法人とは、医療を行うことを目的として法人格を持ち、医師などの医療従事者が設立する法人のことです。医療法人の設立は個人の設立による医療から、法人としての責任を持つ医療へと移行することを目的としています。医療法人は、医療施設を運営するための法人として設立され、一般病院や診療所、介護施設などの運営を行っています。

一方、医療法人の持分とは、医療法人を設立した医療従事者が出資する株式や出資証券などの意味合いを指します。医療法人の持分によって、医療法人の経営に参加し、経営に関する権利や義務を持つことができます。つまり、医療法人の持分は、医療法人の所有権を表し、医療法人を構成する要素の一つとなっています。

※医療法人が持分ありなのか無しなのかを見分ける方法については最後の段落に記載しています。

医療法人の持分

1.医療法人の所有権を表す
 医療法人の持分は、医療法人の所有権を表します。医療法人を設立する際には、医師や歯科医師などの医療従事者が出資して資金を調達するため、医療法人の持分は医療従事者が出資する株式や出資証券として発行されます。これによって、医療法人を設立した医療従事者たちは、医療法人の所有者となります。

2.経営に関する権利を持つ
 医療法人の持分を持つことで、医療法人の経営に関する権利を持つことができます。具体的には、医療法人の社員総会において、重要な経営議案について投票する権利を持つことができます。また、理事に就任することもできます。

3.経営に関する責任を負う
 医療法人の持分を持つことで、医療法人の経営に関する責任を負うことになります。具体的には、医療法人の経営が行き詰った場合や、不正行為があった場合など、役員としての責任を負うことになります。

医療法人の持分の計算方法

1.医療法人の資本金を決定する
 医療法人の設立にあたっては、まず資本金を決定する必要があります。医療法人の資本金は、医療従事者が出資する金額の合計によって決まります。

2.医療従事者が出資する金額を決定する
 医療従事者は、医療法人を設立する際に、資金を出資します。出資する金額は、医療法人の資本金に応じて決定されます。出資する金額によって、医療従事者が持つ持分の数が決まります。

3.医療従事者が持つ持分の数を計算する
 医療従事者が出資した金額に応じて、医療法人の資本金の割合を算出します。そして、その割合に医療法人の持分の総数を乗じることで、医療従事者が持つ持分の数が計算されます。
 
 例えば、医療法人の資本金が1,000万円で、医療従事者Aが300万円、医療従事者Bが200万円、医療従事者Cが100万円を出資した場合、以下のように計算されます。

・医療従事者Aが持つ持分数 300万円 ÷ 1,000万円 ×持分総数 = Aが持つ持分数

・医療従事者Bが持つ持分数 200万円 ÷ 1,000万円 × 持分総数 = Bが持つ持分数

・医療従事者Cが持つ持分数 100万円 ÷ 1,000万円 × 持分総数 = Cが持つ持分数

以上のように、医療法人の持分の計算には、医療法人の資本金と医療従事者が出資する金額、そして医療従事者が持つ持分の数が関わってきます。

決算書で持分を確認する方法

 貸借対照表(B/S)において、出資金(純資産)の中に持分(払込済出資額)が含まれます。
 医療法人は、財務諸表を作成する際に、定期的に払込済出資額を計算して記載する必要があります。したがって、医療法人の決算書には、払込済出資額が記載されている場合があります。ただし、決算書には、払込済出資額以外にも、医療法人の財務状況を示す多くの情報が記載されているため、必ずしも払込済出資額だけを見ることはできません。

払込済出資金には持分以外が含まれる
払込済出資金には、出資者が出資した金額以外に、次のような項目が含まれる可能性があります。

1.手数料や経費
 出資手続きの際には、証券会社や銀行などに手数料を支払う必要がある場合があります。また、設立時の費用や税金、登記費用などの経費も、出資者から徴収されることがあります。これらの費用は、払込済出資金の中に含まれます。

2.入金日時による利息
 払込済出資金が入金されるまでの期間に利息が生じる場合があります。これは、出資者が払込済出資金を入金する前に、銀行口座や投資口座に預けていた場合などに生じます。このような場合、利息分も払込済出資金の中に含まれます。

これらの項目は、医療法人の定款によって異なる場合があります。そのため、出資手続きの際には、事前に詳細を確認することが重要です。

出資持分ありなしの見分け方

 医療法人の定款に「出資の払戻し」についての条文があります。また、残余財産の処分に関わる条文の中にも分配についての記載があります。つまり、定款で確認ができます。
持分なしの定款の場合には、この出資額についての記載がありません。

 医療法人の払込済出資額は、医療法人の定款に記載されます。定款とは、法人の設立時に作成される契約書のようなもので、医療法人の組織形態や事業内容、出資者名簿、出資額、財産の譲渡制限などが定められています。

 医療法人は、定款を作成する際に、出資者の出資額や株式の数、議決権の割合などを明確に記載することが求められています。そのため、医療法人の払込済出資額も定款に記載されており、出資者ごとの出資金額や総出資額が明示されます。

また、医療法人が発行する有価証券(出資証券や株式など)にも、払込済出資額が記載されています。出資者が有価証券を購入する際には、払込済出資額や未払出資額などが明示され、出資者がどれだけ出資しているかが分かります。医療法人によっては出資に関わる発行を行っていない場合もあります。

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