個人診療所と医療法人の相続税の違い
相続税の違い(個人診療所と医療法人)
医療法人設立(医療法人化)をする場合、承継準備、分院開設、規模の拡大などの理由がありますが、税金対策として法人成りするケースもあります。相続税対策の一つとして、財産の評価額を下げる方法があります。そのためには、個人診療所に関係する財産の評価の仕組みを知る必要があります。
診療所を経営する場合、大きく分けて個人と法人があり、個人の診療所と医療法人の財産評価方法は異なります。
1.個人診療所の場合
個人医院を運営している場合、院長の個人資産が診療所に関連する財産として扱われます。このため、院長が所有する土地や建物、診療所の設備などの資産は、すべて相続税の課税対象となります。これにより、個人医院では、院長個人の資産と診療所に関連する資産(負債)を合算した額が相続時に評価されるため、相続税の負担が大きくなることがあります。
ポイント:
- 個人医院の財産は、院長個人の資産として評価される。
- 土地や建物、設備などの資産すべてが相続税の対象。
- 相続税負担が大きくなる可能性がある。
2.医療法人の場合
医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人です。個人開設した診療所を「医療法人設立申請」により、医療法人とすることができます。
医療法人にもいくつか形態があります。代表的な社団医療法人では、「出資持分あり」と「出資持分なし」により、資産評価の方法が異なります。それぞれ相続税の課税対象や評価方法が異なります。
出資持分は、医療法人に出資をした者が、その医療法人の資産に対し、出資額に応じて有する財産権をいいます。
医療法人の設立申請をする際に出資や拠出をしますが、出資者が出資持分に応じて払戻しの請求ができる医療法人を「持分の定めのある医療法人」といいます。持分の払戻しの請求の可否により受け取ることができる残余財産がかわります。したがって評価方法も異なります。
①持ち分の定めのある医療法人
持分ありの医療法人の場合は、「出資持分」が相続税の課税対象となります。
出資持分の評価は、「取引相場のない株式の評価」に準じることとなっており、その法人の純資産価額を基準に評価する方法と同種同規模の法人の数値を基準にする方法を併用して計算します。
②持ち分の定めのない医療法人
持分の定めのない医療法人の場合は、基金に拠出した金額が相続税の課税対象となります。医療法人を解散または退職する際に払い戻される金額は、拠出した金額が限度になります。
平成19年施行の医療法改正により平成19年4月以降は「持分の定めのない医療法人」に限られることになりました。医療法人が相続対象となった場合、相続税の評価額は、基金の拠出金額となります。経営が順調で利益が医療法人に留保されている場合、承継の際に相続税の課税対象になるのは、基金の拠出金額です。持分のない医療法人の場合は、相続税の負担がその分軽減されます。
ポイント:
- 医療法人の財産は法人資産として扱われるため、院長個人の相続税負担が軽減される可能性がある。
- 出資持分ありの医療法人では、出資持分が相続税の課税対象。
- 出資持分なしの医療法人では、基金の拠出金額のみが課税対象。
医療法人化のタイミング
個人医院と医療法人では、相続税の取り扱いが大きく異なります。個人医院では、すべての財産が相続税の対象となり負担が大きくなることがありますが、医療法人では、法人の形態によって相続税の課税対象が異なり、相続税の負担が軽減される可能性があります。そのため、将来の相続を見据えた場合、医療法人化を検討することが重要です。
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