医療法人設立のメリット/デメリット

クリニックの場合、相続時には個人診療所ではなく医療法人であるほうがスムーズに事業承継することができます。また、医療法人だと分院展開などの拡大戦略をとることができます。
では、どのクリニックもすぐに医療法人設立申請をしたら良いかと言えばそうではありません。

医療法人のメリット/デメリット

医療法人設立(医療法人化)のメリット・デメリットとどのようなときに医療法人設立を検討すればよいかは以下の通りです。

医療法人化のメリット

1.事業承継手続きの簡素化
持分なしの医療法人、親族内での承継では、承継時に出資持分に対する相続税・贈与税または、譲与所得税などの税負担がありません。事業承継や相続を行いやすくなります。

2.所得税負担の圧縮
個人診療所では所得税が課せられます。所得税は累進課税方式のため、所得が増えるほど税率が高くなります。(所得税と住民税で最大50%)。医療法人では法人税(2段階比例税率)が課されますが、法人税の税率は所得税より抑えられています。(約20%)

3.院長(理事長)への役員報酬の支払い
医療法人になると、院長は理事長に就任します。役員となり、役員報酬を受け取ることになります。役員報酬は給与所得になります。そのため、個人診療所で得られる事業所得より所得控除が多くなるため、課税所得を減らすことができます。また、医療法人の利益を減額させることができます。

4.家族を医療法人の役員にして役員報酬を支払うことができます。

5.事業展開
分院展開や介護事業などの事業展開ができるようになります。

6.退職金制度
個人診療所では認められなかった退職金が支給可能になります。

7.社会的信用
医療法人になることで個人診療所よりも、金融機関などからの評価など信用力が増します。

8.承継のしやすさ
相続の時の届け出などがスムーズです。個人診療所への許認可制度のため、飲料変更の手続きが煩雑になります。

医療法人化のデメリット

1.業務範囲が制限
医療法人の附帯業務禁止規定によって、業務範囲が制限されます。

2.理事長(個人)の収入の制限
医師個人は、役員報酬を受け取ることになり、役員報酬以外の資金は自由に処分できなくなります。

3.持分評価の高騰
剰余金の配当禁止規定等により、剰余金が内部留保され、出資1口当りの評価額が徐々に高くなります。

4.社会保険の強制適用
社会保険の加入が強制適用になり、役員及び従業員は健康保険・厚生年金に加入しなくてはなりません(医師国保を継続することも可能)。

5.行政手続きの頻度が増す
法務局に役員変更等の登記が、都道府県知事に決算書類の提出が義務づけられます

6.行政指導
都道府県知事による立ち入り検査等の指導が強化されます。

7.交際費の限度
交際費として、損金に算入できる金額に限度が設けられています。

8.小規模企業共済の脱退
原則として個人で掛けていた小規模企業共済を脱退しなくてはなりません。

9.医療法人の解散・清算時
特別な理由がない限り、安易に医療法人を解散することはできません。解散・清算した場合、残余財産は、国や地方公共団体、医師会等に帰属します。

医療法人設立申請検討の時期

1.個人診療所の社会的信用を高めたい場合
法人化することで地域や金融機関、他の企業などからの信用力が増します。

2.事業承継の可能性が出てきた場合
医療法人設立の申請時期は都道府県によって違います。また、年に2~3回しか実施されません。
余裕を持って計画する必要があります。

3.収入が高額の場合
収支のバランスをみて実施を検討します。

4.分院展開、介護保険事業などへの進出を検討する場合
院長が複数の事業所の管理者に就任することが望ましくないため、法人化して展開する必要があります。

※医療法人の設立に関しては、土地・建物の所有の有無、保険、契約関係など個別の事情により、総合的に判断されることが大切です。

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